泌尿器科の病気
排尿のメカニズム
尿をためる膀胱が収縮し尿を押し出す(①)とともに、膀胱の出口側が緩んで尿の通り道を開く(②)、この連動作業が必要です。水道に例えると、①は蛇口のひねりかた、②はホースの太さと考えてください。
①には膀胱が関与し、②は男性では前立腺が関与することが多いです。
前立腺肥大症
膀胱の出口側にある前立腺が加齢とともに肥大することで、尿の出口側の通過障害が起こります。尿が出づらい、勢いがない、すっきり出ないなどのほか、排尿後に尿漏れするなどの症状のほか、自力で尿が出せなくなること(尿閉)もあります。
検査は肛門からの診察(直腸診)・超音波検査、尿流測定検査、残尿測定検査を行います。
薬物療法で尿の通過障害が改善することが多いですが、効果不十分な場合は手術療法や尿道カテーテルによる治療の相談をします。
過活動膀胱/低活動膀胱
加齢や糖尿病・脳血管疾患などの神経疾患、前立腺肥大症などが原因とされます。過活動膀胱は膀胱に尿があまり多くためられない状態で、尿がすっきり出ない、トイレに間に合わずに尿漏れする(切迫性尿失禁)などの症状が起こります。低活動膀胱は膀胱の収縮力が低下する状態で、尿が出づらい、勢いがないなどの症状のほか、自力で尿が出せなくなること(尿閉)もあります。
検査は前立腺を含めた超音波検査、尿流測定検査、残尿測定検査などを行います。
薬物療法を行いますが、低活動膀胱の場合は、間欠的自己導尿などの尿道カテーテルによる治療を行うこともあります。前立腺肥大症があれば、合わせて治療が必要です。
腹圧性尿失禁
出産、加齢などが原因で尿道括約筋(尿をガマンする筋肉)をふくめた骨盤底筋群のはたらきが低下し、くしゃみや重いものを持ち上げるなどの過度の腹圧がかかった場合に尿失禁がおこる状態です。
検査は尿流測定検査、残尿測定検査などを行います。
骨盤底筋体操(骨盤底筋群をきたえる体操)や薬物療法を行いますが、効果が不十分の場合は手術療法の相談をします。
尿路結石症
生活習慣の問題などにより腎臓で結石がつくられ、尿管に結石がはまり込むと、側腹部を中心に強い痛みがおこります。結石の場所によって腎結石、尿管結石に区別されます。時に急性腎盂腎炎を合併し、重症化することが多いため注意が必要です。
検査は超音波検査やCT検査をおこないます。
鎮痛薬を使用しながら飲水を行うことで自然に排石することもありますが、結石が大きい場合や、なかなか排石しない場合は手術療法を相談します。
陰嚢水腫
精巣の周囲に体液がたまる状態です。通常は痛みがおこることはなく、放っておいても心配はありません。
検査は超音波検査などを行います。
気になる、歩行に支障があるなどの場合は、体液を穿刺吸引することもできます(いずれまた、たまってきます)。小児の場合は穿刺吸引すべきではありません。根本的には手術療法で精巣周囲の膜構造を切除します。
尿路感染症
急性膀胱炎
女性に多く、尿道から膀胱内に細菌が入り込んで炎症を起こすことで排尿時の痛み、尿の回数が多い(頻尿)、尿がすっきり出ない(残尿感)の症状が起こります。
検査は尿培養検査を行います。
大腸菌などの腸内細菌が原因のことが多く、抗菌薬による薬物療法で改善することが多いですが、繰り返すこともあります。
急性腎盂腎炎
前立腺炎
排尿時の痛み、尿の回数が多い(頻尿)、尿がすっきりしない(残尿感)、発熱などの症状が起こります。原因は腸内細菌などの細菌、性感染症、前立腺の血流障害などが考えられます。
検査は尿培養検査、血液検査などを行います。
抗菌薬を中心とした薬物療法で改善することが多いですが、繰り返すこともあります。
悪性腫瘍
前立腺癌
腎臓の疾患
腎臓とは
腎臓は尿をつくる臓器ですが、尿の中にはさまざまな老廃物が含まれています。腎臓の機能が落ちると老廃物が体内にたまってしまい、いろいろな症状を起こすことがあります。
急性腎不全
男性特有の疾患
勃起不全
薬物治療が効果的な場合がありますが、保険適応外のため自費診療となります。事前に血液検査を行う場合があります。
常用薬によっては使用できないこともあり、ご注意ください。
更年期障害
男性ホルモンの低下により、やる気が出ない、疲れやすい、勃起が弱いなどの症状が起こることがあります。
前立腺癌を含めた血液検査のチェックのうえ、薬物治療の相談をさせていただきます。
性感染症
尿をするときに痛い、尿道から膿が出るなどの症状が起こります。
薬物療法を行いますが、最も大切なことは「予防すること」です。
頭髪のお悩み
薬物療法が効果的な場合がありますが、保険適応外のため自費診療となります。事前に前立腺癌のチェックをおすすめします。
お子さんの疾患
停留精巣
健常児の3%程度に認め、先天性疾患で最も多いとされています。成長とともに精巣が自然に降りてくることもあります。1歳をすぎるとその可能性は低くなるため、手術療法の相談をすることがあります。
将来の精子の形成能力が落ちること(不妊症の不安)、精巣癌のリスクが高いこと(10倍程度)が問題です。
包茎
成長とともに改善が期待できますが、軟膏などの薬物療法をくわえることで改善をうながすこともできます。
おちんちんの先が赤く腫れあがる亀頭包皮炎を繰り返す、尿が飛び散るなどの場合は、手術療法の相談をすることがあります。
夜尿症(おねしょ)
なかなかオムツがとれない、といった問題はさまざまな原因が考えられます。生活環境の変化などの精神的ストレス、小児の過活動膀胱、多飲などです。
原因に応じて、薬物療法などを考えていきますが、長い目で見ることが必要です。
精巣捻転
思春期の男児に発症し、急に精巣やそれにつながる血管が回転し、強い疼痛が起きます。「おなかが痛い」と訴えるお子さんもいます。
精巣の血流障害による壊死(組織が死んでしまうこと)により、将来の精子の形成能力が落ちること(不妊症の心配)が問題となります。
超音波検査で診断できることもありますが、早急に診断・治療をかねて手術を行うことも考えなければなりません。